正倉院展に行ってきました
国産コロナワクチンの治験に応募し、治験コーディネーターからの返事を待っているところです。現行のワクチンは打てない。そこで、自費で陰性証明書を取り、第73回正倉院展を見学してきました。
時間帯予約制で、わたしの入場時間は14時。その前にランチをとろうと、近鉄奈良駅そばの東向商店街を抜け、もちいどのセンター街へ。奈良の2大スター、せんとくんとまんとくんのツーショットパネルを過ぎると、食欲を刺激するカレーの香りが。
2年ぶりに再訪。若草カレー本舗さんにお邪魔しました。奥行きの深い店内はボックス席とカウンター席があり、ひとりでも落ち着いて食事を楽しめる。お店の入口だけでなく、各席に消毒液が置かれているのがありがたい。前回も食べた「焼き若草カレー」と、奈良のクラフトビール「あをによし」を注文。
辛さの中に野菜の甘みが感じられるカレーと、香りとコクがありながらも、すっきりとした味わいのビールは相性が良い。添えられたピクルスもおいしかった。特にサヤインゲンのピクルスが気に入りました。お店で販売して欲しいくらい。
久しぶりの外食でお腹と心を満たし、会場の奈良国立博物館へ移動。特設のコインロッカーにカメラバッグを預け、検温を経て入場を待つ列に並んだ。辺りは人と鹿で賑わっているが、密集しておらず、ほどよくざわざわしている感じで居心地がいい。人馴れした鹿たちの距離の近さには、相変わらずびっくりさせられるけれど。気づくと真横に立っている。わたしが鈍感なのかしら。
14時枠の入場が始まり、手の消毒を済ませて館内へ。資料の劣化を防ぐため、展示室は照明を落としている。眼病を患ってから、大好きだった美術館や博物館が少し苦手になった。それでも見えるうちは行きたいと思う。正倉院展が時間帯予約制となり、混雑を避けて見学できるのはうれしい。コロナ前は宝物よりも、人の後頭部を見る時間のほうが長かったから。
背面に意匠を凝らした鏡があった。その鏡を入れる黒漆の箱の美しかったこと。艶やかで深みのある黒に吸い込まれた。行けば、必ずこういう出合いがある。だから正倉院展はやめられない。
地下にあるミュージアムショップへ行く途中、三脚を立てたカメラマンに出合った。背景幕の前に立ってシャッターを押すと、正倉院をバックに撮影した写真が出来上がるという。面白そうだが、ひとりじゃ気恥ずかしい。しかし、極楽ぼっちを標榜するからには、弱い自分を越えねばならぬ。で、撮ってもらったのがこちら。
「笑顔でいきましょう」と言われて思わず吹き出してしまい、顔だけはニカッと笑っているのだが、手の表情など全体的に硬いですねぇ。我ながら芸がない。ともあれ、撮られる側にまわることはあまりないので、新鮮な経験だった。
写真はその場で引き伸ばして簡易なフォトフレームに入れてもらえるほか、会社のHPからダウンロードもできる。次回の正倉院展で、小路谷写真株式会社の出張サービスを見かけた方は、一度覗いてみてください。
この日は肘の痛みが強く、カメラを持ってきたものの、撮影は無理かもしれないと思っていた。それがどうだろう。珍しく被写体となったことで、写真を撮りたくてたまらない。コインロッカーに預けたカメラを取り出し、奈良公園を歩いた。
刻々と日が傾く中、散策を楽しむ人がちらほら。角を切られた雄鹿が、雌のお尻を追いかけまわしている。と、数メートル先で鹿同士が正面からぶつかり、ウッという小さな呻き声がした。わたしの近くにいた若い男性がつぶやいた。
「やばい、喧嘩してるよ」
勝負は一瞬でつき、押し込まれたほうは小走りに逃げた。雄鹿の決闘を見たのは初めてだ。わたしは彼の後を追った。負けるのはきらいだ。なのに、敗者に惹かれる。被写体としては、敗者のほうが美しい。群れから離れて立つ姿をそっと撮影。何だか寂しそうな背中。鹿の世界も大変だ。いいお相手が見つかるといいね。
後で知ったが、鹿は明け方と日没に活動的になる。加えて、秋は恋の季節。失恋した彼には悪いけど、良いものを見せてもらいました。秋の夕暮れの奈良公園、ドラマチックでお勧めです。ただし、恋愛モードの雄鹿は気が立っているので、近づきすぎないようにしてくださいね。
大きな木の陰で、まだ若く小柄な鹿が、頭をぶつけ合っている。慌ててレンズを向けたが、うまく撮れない。夜盲の症状があり、日が落ちきってしまうと歩くのにも苦労するので、撮影を切り上げた。また来ます。