2月に白内障と緑内障の手術をしたが、このたび別の病気が見つかった。
網膜色素変性症という国の指定難病。
コロナウイルスに加えて複数の眼病との共存を強いられ、
しょげているところだ。
幸い中心部分の視野は保たれているが、 来年の今頃はどうなっているか。
残りの時間を数え始めると、じっとしていられない。
旅に出たくてたまらない。
うずうずしながら過去に撮影した写真を整理していると、
大阪・天王寺で撮影したものがあった。
ビルの上に、天守を載せたような建物。
日本の城を模したホテルだ。家族連れで賑わう公園のそばに、
大人のテーマパークがあるとは。
このカオスな感じ、好きである。
写真を撮影した日は、天王寺から新世界、ジャンジャン横丁を歩いた。
新世界で、有名なつぼらやの張り子のふぐを撮影していると、
60代くらいの男性から声をかけられた。
この辺りは危ないから気を付けて。
ジャンジャン横丁を抜けて広い通りへ出る。道路の向こう側にもアーケード
商店街があるのが見えた。と、ここでもおじさんに忠告された。
向こうへ渡ってはいけない。
アーケードの入口に、かわいらしい動物のレリーフがある。
徒歩圏内に動物園があるからだ。子ども連れも来るような地域なのに、
なぜ?後になって、この先に飛田新地があると知った。
新世界は観光地だが、寄せ場、色街に隣接している。広い通りは飲食店が
ひしめき、意匠を凝らした立体看板が目を引くが、ちらりと角を覗いたら
別の顔が見えた。成人向けの映画館の前では男たちがたむろし、
傍らではホームレスらしき男性が座って酒を舐めていた。
今、あいりん地区と入力すれば、YouTubeの動画がたくさん出てくる。
若者やバックパッカーが遊びに来る観光地になりつつある。
わたしに声をかけてくれたおじさんたちは、この界隈の変化を
どんな気持ちで見ているだろう。
新世界とその周辺に惹かれる理由。わたしの場合は、
街に漂う自由な空気だ。
初めて新世界を訪ねた時のこと。昼酒の酔いを醒ましているのか、
道端のちょっとしたスペースに佇んでいる男たちがいた。会話はなく、
連れというわけではなさそう。ゆったりと街の風景に溶け込んでいる。
それを見て思った。自由でいいなと。
旅行を自粛する中、残念なニュースを聞いた。つぼらやが9月で
閉店するという。
愛嬌のある張り子のふぐが有名だが、店の外壁は波模様、軒先には小さな
ふぐたちがずらり。これでもかとふぐがいて、その徹底ぶりに思わず
笑ってしまう。
最後の姿をカメラに収めたいが現状では叶わず、つくづくコロナが憎い。