東京への移動を自粛する要請が出た週末、
テレビのニュースで渋谷のスクランブル交差点を見た。
混雑を避け、歩道のふちに立って信号待ちをするのが常だが、
画面の中は閑散として、青信号で人が渡っているというのに、
横断歩道のストライプが見える。
わたしは渋谷が好きだ。いつ行ってもお祭りみたいな賑やかさ。
あそこにいると、いやなことを忘れられる。
喧噪の中、自分もいつかは死ぬということさえ忘れてしまう。
そして束の間、癒される。
よく行くのは円山町界隈。
渋谷百軒店の看板をくぐり、円山町から神泉駅まで散歩する。
往来のはげしい道玄坂を一本入るとホテル街で、
カメラを持っているとパパラッチにでもなったような
居心地の悪さを感じるが、負けじと路地を進めばしゃれた店が
点在している。
わたしは足が不自由で、目も悪くなってしまい、
起伏に富んだ道は歩きにくい。坂道で転倒したこともあるが、
渋谷の街を平らにして欲しいとは、個人的には思わない。
のっぺらぼうでは味気ない。
人が集まらないと思うのだ。
豊かな表情を残しつつ、安全で、誰もが過ごしやすい街になれば、
それがいちばん良いのだが。